Web制作会社の選び方 — 失敗する発注の3パターン
Web制作会社をどう選べばいいか分からない方へ。失敗する発注に共通するパターンと、信頼できる制作会社を見極めるためのチェックポイントを解説します。
Web制作の発注で失敗する企業には共通点がある
ホームページの制作やリニューアルを外注して「思っていたものと違った」「成果が出なかった」という経験を持つ企業は少なくありません。中小企業庁の2024年版中小企業白書でも、IT投資における課題として「導入の効果が分からない」「コストが負担できない」が上位に挙がっています(出典 中小企業庁 2024年版中小企業白書)。
ただ、失敗の原因は制作会社だけにあるわけではありません。発注側の選び方、頼み方に問題があるケースが相当数あります。弊社にも「前の制作会社で失敗したので、作り直したい」という相談が月に数件来ますが、話を聞くと発注側にも改善の余地があったケースがほとんどです。
失敗する発注には明確なパターンがあります。これを知っておくだけで、制作会社選びの精度は大きく上がります。
安さだけで選ぶと「作り直し費用」が発生する
最も多い失敗パターンが、見積もり金額の安さだけで制作会社を決めることです。
「ホームページ制作10万円」「月額9,800円でサイト運営」といった広告をよく見かけます。この価格帯で制作できるサイトは確かに存在しますが、含まれている作業は限定的です。テンプレートデザインにテキストと画像を流し込む作業がメインで、情報設計やSEOの内部対策、問い合わせにつなげる導線設計は省略されています。
SEO設計が省略されたサイトは検索から見つけてもらえない
低価格帯の制作で最も削られるのがSEO設計です。ページタイトルやメタディスクリプションの最適化、見出しの階層構造、内部リンクの設計、ページ表示速度への配慮。これらが考慮されていないサイトは、Googleの検索結果で上位に表示されません。
「サイトを作ったのにアクセスがない」という相談の大半は、この設計工程が抜けていたことに起因します。検索からの流入がなければ、サイトは「存在しない」のと同じです。結局、1〜2年で「ちゃんとしたサイトに作り直したい」となり、50〜100万円の追加費用が発生する。最初から適正な予算で作った方がトータルコストは安くなります。
見積もりの「安さの理由」を確認する習慣をつける
安い見積もりが来たら、まず「なぜ安いのか」を聞いてください。テンプレート利用で工数を減らしているのか、一部の工程を省略しているのか、公開後のサポートが含まれていないのか。理由が明確で、自社のニーズと合っていれば問題ありません。ただ、理由を説明できない安さには警戒すべきです。
デザインの見た目だけで判断すると「きれいだけど使えないサイト」ができあがる
制作会社の実績ページを見て、「このデザインがかっこいいからここに頼もう」と決めるのも危険です。
Webサイトの目的は「見た目をきれいにすること」ではありません。問い合わせを増やす、採用応募を増やす、ブランドイメージを正しく伝える。これらのビジネス上のゴールを達成するための手段です。どれだけ見た目が洗練されていても、訪問者が問い合わせフォームにたどり着けないサイトは機能していません。
導線設計の巧拙は見た目からは判断できない
制作会社の実績を見るとき、デザインの美しさだけでなく、「そのサイトを使ってみたとき、迷わず目的のページにたどり着けるか」を確認してください。実績サイトを実際にスマートフォンで操作して、問い合わせページまで何クリックで到達するか試してみる。3クリック以内にたどり着けないなら、導線設計に問題があります。
トップページのスライドショーやアニメーションに凝っている制作会社は多いですが、大事なのはその先です。サービスページの構成は分かりやすいか、CTAボタンは適切な位置にあるか、フォームの入力項目は多すぎないか。こうした実務的な部分に力を入れている制作会社かどうかが分かれ目になります。
制作実績は「成果」まで聞く
実績ページに載っているのは完成したサイトのスクリーンショットだけ、というケースが多いです。しかし、本当に知りたいのは「そのサイトでクライアントの課題は解決したのか」という点です。
打ち合わせの際に、「この実績のサイト、公開後に問い合わせ数はどう変化しましたか」と聞いてみてください。数字で答えられる制作会社は信頼できます。「デザインを気に入っていただきました」しか言えない会社は、成果よりも見た目を重視している可能性が高い。
「なんでもできます」を信じると全てが中途半端になる
「Webサイトも作れます、アプリも作れます、動画制作もやります、SNS運用もお任せください」。こういう制作会社はたくさんあります。一見すると便利そうですが、実態は「全部やるけど、全部70点」ということが少なくありません。
専門性のない制作会社は表面的な対応しかできない
Web制作にはデザイン、フロントエンド実装、バックエンド開発、SEO、コンテンツ設計、サーバー運用と、多岐にわたる専門分野があります。全てに精通している小規模な制作会社はまず存在しません。
「なんでもできます」の裏側には、「全部外注しています」が隠れていることが多い。ディレクターだけが社内にいて、デザインもコーディングも外部のフリーランスに丸投げする。管理コストが上乗せされて割高になるうえ、プロジェクト中のコミュニケーションも間接的になる。何か問題が起きたときの対応も遅くなります。
制作会社を選ぶときは、「御社の強みは何ですか」と聞いてみてください。明確に答えられる会社は、自社の得意領域を理解している。「全部できます」としか言えない会社は、逆に何も尖っていない可能性があります。(正直、全方位型の制作会社で本当に質が高いのは、従業員50人を超えるような大手だけです)
初回提案で「何を聞いてくるか」が制作会社の質を決める
信頼できる制作会社を見極めるポイントはいくつかありますが、最も分かりやすいのは初回の打ち合わせです。
課題のヒアリングから始める会社は信頼できる
良い制作会社は、最初の打ち合わせで「どんなサイトを作りたいですか」ではなく「今、何に困っていますか」から聞き始めます。サイトは課題解決の手段なので、課題を理解しないまま手段の話をしても意味がない。
逆に、初回の打ち合わせでいきなり「こういうデザインがおすすめです」「このCMSを入れましょう」と提案してくる会社は要注意です。ツールやデザインの話は、課題と目的が整理されてからするもの。順番が逆になっている時点で、その制作会社はプロセスを軽視しています。
もう一つ見るべきは、ターゲットユーザーの話を掘り下げるかどうか。「御社のお客様はどんな人ですか」「サイトに来る人は何を求めていますか」という質問が出るかどうかで、ユーザー視点の設計ができる会社かどうかが分かります。
見積もりの内訳が細かい会社は仕事も丁寧
見積書の書き方にも制作会社の姿勢が表れます。「Web制作一式 80万円」という見積もりと、「要件定義 10万円、ワイヤーフレーム設計 8万円、トップページデザイン 12万円、下層ページデザイン(5P)20万円、コーディング 15万円、CMS構築 10万円、テスト・公開作業 5万円」という見積もり。どちらが信頼できるかは明白です。
内訳が細かい見積もりは、各工程にどれだけの工数がかかるかを制作会社自身が把握している証拠です。何かを削る・追加する交渉もしやすい。一式見積もりでは「何にいくらかかっているのか」が不透明で、後から「これは追加費用です」と言われるリスクがあります。
公開後のサポート体制も選定基準に含めるべき
サイトは公開して終わりではありません。SSL証明書の更新、CMSやプラグインのアップデート、セキュリティパッチの適用、コンテンツの追加・修正。運用フェーズでのサポートがない制作会社に頼むと、公開後に困ることになります。
月額の保守費用はいくらか、対応範囲は何か、障害時の復旧体制はあるか。これらを契約前に確認してください。「作るだけ」の制作会社を選ぶと、公開後に別の会社に保守を依頼する必要が出てきて、引き継ぎコストが余計にかかります。
フリーランス・制作会社・大手代理店はそれぞれ得意領域が異なる
Web制作の依頼先は大きく3つに分かれます。それぞれに向き不向きがあるため、自社の状況に合った選択をしてください。
フリーランスは小規模案件に向いている
5〜10ページ程度のシンプルなサイトなら、フリーランスへの依頼がコスパ良く仕上がります。中間マージンがないため、同じ品質でも制作会社より安くなることが多い。意思決定も早く、直接やりとりできるのでコミュニケーションのロスも少ない。
ただし、フリーランスは基本的に一人で作業するため、対応範囲に限界があります。デザインが得意な人はコーディングが弱い、その逆もある。病気やケガで作業が止まるリスクもゼロではない。長期的な保守運用を任せたい場合は、フリーランス個人の継続性がリスク要因になります。
制作会社は中規模案件のバランスが良い
10〜30ページ規模で、情報設計やSEOも含めた総合的な制作を求めるなら、5〜20人規模の制作会社が適しています。ディレクター、デザイナー、エンジニアがチームとして動くため、品質管理と進行管理の両方がカバーされる。
制作会社を選ぶ際は、得意な業界や案件規模を確認してください。BtoB企業のコーポレートサイトに強い会社もあれば、ECサイトに特化している会社もある。自社と同じ業界・同じ規模の実績があるかどうかは重要な判断材料です。
大手代理店は予算500万円以上の大規模案件向き
ブランディングまで含めた総合的なWebプロジェクトや、数百ページ規模の大規模サイト構築なら大手代理店が選択肢に入ります。ただし、最低予算は500万円〜が一般的で、間接費(営業、プランナー、アカウント担当のコスト)が上乗せされるため、中小企業にとっては費用対効果が合わないケースが多いです。
RFPを作ると発注の精度が格段に上がる
RFP(提案依頼書)は、制作会社に「こういうサイトを作りたいので、提案と見積もりをください」と依頼するための文書です。大企業の発注では当たり前ですが、中小企業でも簡易的なRFPを作るだけで発注精度は大きく変わります。
RFPに書くべき項目は5つで十分
中小企業のWeb制作発注なら、RFPは1〜2ページで十分です。書くべき項目は、プロジェクトの背景と目的、ターゲットユーザー、サイトに必要なページ構成(大まかでよい)、予算の目安、希望する公開時期の5つ。
特に重要なのは予算の目安を書くこと。「予算は応相談」にすると、制作会社は提案の方向性を絞れません。「50〜100万円の範囲で」と書くだけで、その予算内でできることの提案が返ってきます。予算を隠して複数社に提案させるのは、制作会社にとっても発注側にとっても時間の無駄です。
相見積もりは3社がちょうどいい
2社では比較の幅が狭く、5社以上では比較検討の手間が大きすぎる。3社に同じRFPを渡して提案を受けるのが、中小企業の発注としてはバランスが取れています。
相見積もりで見るべきは金額だけではありません。提案の内容、課題の理解度、コミュニケーションの質を総合的に比較してください。最安値でなくても、課題を的確に理解して具体的な解決策を提案してくる会社が、結果として良い仕事をします。
丸投げしてはいけない部分を理解しておく
制作会社はWeb制作のプロですが、自社のビジネスのプロではありません。制作会社に任せてはいけない部分があります。ここを丸投げすると、どんな優秀な制作会社でも良いサイトは作れません。
原稿と写真は自社で用意する価値がある
「原稿も写真もお任せで」という依頼をよく受けますが、制作会社が書いた原稿はどうしても表面的になります。自社の強みや他社との違いは、自分たちが一番よく知っているはずです。完璧な文章でなくていいので、伝えたい内容のメモや箇条書きだけでも自社で用意してください。制作会社がそれを整える方が、ゼロから書くよりはるかに質の高い原稿になります。
写真も同様です。フリー素材だけで構成されたサイトは、どこかで見たことのある印象になります。オフィスの写真、スタッフの写真、仕事風景の写真。プロのカメラマンに半日撮影を依頼するだけで、サイト全体の信頼感が格段に上がります。(フリー素材の笑顔の外国人ビジネスパーソンが並んでいるサイト、まだ結構あります)
ゴール設定は経営判断そのもの
「サイトで何を達成したいのか」は経営判断です。月間の問い合わせ数を現在の3件から10件に増やしたい、採用ページ経由の応募を月5件にしたい。こうした具体的な数値目標を設定するのは、制作会社ではなく経営者の仕事です。
ゴールが曖昧なまま「いい感じに作ってください」と依頼すると、制作会社は自分たちの基準で「いい感じ」に作ります。それが自社のビジネスにとって「いい感じ」かどうかは別の話です。数字で測れるゴールを設定し、それを制作会社と共有する。これが発注者としての最低限の責務です。
最後に
Web制作会社の選び方で失敗する原因は、制作会社の質だけではありません。安さだけで選ぶ、見た目だけで判断する、「なんでもできます」を鵜呑みにする。この3つのパターンを避けるだけで、失敗の確率は大幅に下がります。
信頼できる制作会社を見極めるポイントは明確です。初回の打ち合わせで課題から聞いてくるか、見積もりの内訳が透明か、公開後のサポート体制があるか。そして、原稿とゴール設定は自社でしっかり準備する。この準備ができている発注者には、制作会社も本気で応えます。
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