リスティング広告、月10万円から始める方法
リスティング広告を始めたいが予算が少ない。月10万円からでも問い合わせを獲得できる広告設計の考え方と、予算を無駄にしない運用のポイントを解説します。
「広告は大企業がやるもの」という誤解が中小企業の機会損失を生んでいる
リスティング広告は月10万円から始められます。テレビCMや新聞広告と違い、Google広告には最低出稿額の縛りがありません。日予算1,000円からでも配信できる仕組みです。
にもかかわらず、中小企業の経営者と話すと「広告はうちの規模では無理」「最低でも月50万はかかるんでしょう」という反応が返ってくることが多い。これは完全な誤解です。Google広告の管理画面を開けば、予算の設定欄には下限がないことが確認できます。
実際、弊社が支援している案件の中には月10〜15万円の予算で毎月コンスタントに問い合わせを獲得しているアカウントが複数あります。大事なのは予算の大きさではなく、その予算を「どこに」「どう使うか」の設計です。
少額予算で成果を出すには「絞る」以外の選択肢がない
完全一致で検索意図を限定する
月10万円の予算で部分一致(インテントマッチ)を使うと、関係のない検索語句にまで広告が配信されます。これは少額予算にとって致命的です。1クリック800円のキーワードなら、月10万円で取れるクリックは約125回。この125回を意図の合わないクリックに浪費する余裕はありません。
完全一致(Exact Match)を主体にすることで、登録したキーワードと一致する検索語句にだけ広告を表示できます。確度の高いクリックに予算を集中させる。少額予算の運用では、この原則が最も重要です。
配信地域を限定する
全国配信する必要がない業種は多いです。店舗型ビジネス、地域密着のサービス業、対面が必要なBtoBなど。配信地域を都道府県単位、あるいは市区町村単位に絞るだけで、インプレッションの質が変わります。
「東京 税理士 相談」と「税理士 相談」では、前者の方がコンバージョン率が高いのは当然です。自社のサービス提供エリアに合わせて配信地域を限定することで、同じ予算でもより多くの有効なクリックを取れるようになります。
検索連動型に集中し、ディスプレイやP-MAXには配信しない
Google広告には検索連動型、ディスプレイ、YouTube、P-MAXなど複数のキャンペーンタイプがあります。少額予算では検索連動型に一点集中すべきです。
理由はシンプルで、検索連動型だけが「今まさにサービスを探している人」に広告を出せるからです。ディスプレイはニュースサイトやブログを見ている人にバナーを表示するもの。P-MAXはGoogleのあらゆる面に自動配信するもの。どちらも「検索意図のある人」に限定できません。月10万円を分散させる余裕はないので、最も確度の高い検索連動型に全額を投じます。
月10万円の予算配分は「日予算3,300円、KW数5〜15個」が目安
月10万円を30日で割ると日予算は約3,300円です。クリック単価が500円なら1日6〜7クリック、1,000円なら3クリック程度。この規模感を前提に設計を考えます。
KW数は5〜15個に絞ります。50個も100個も登録すると、1つのKWあたりの予算が薄くなりすぎて、どのKWでもまともなインプレッションが出ません。少ないKW数に予算を集中させて、まず「このKWで問い合わせが取れるかどうか」を検証する方が合理的です。
KWの選び方は「地域名+サービス名+意図語」の3語以上の掛け合わせが基本です。「渋谷 税理士 相談」「横浜 ホームページ制作 見積もり」「大阪 社労士 顧問」のように、具体的な意図が含まれるKWを完全一致で登録します。単語1つだけのキーワード(「税理士」「ホームページ」など)は検索意図が曖昧なので避けます。
(最初の1ヶ月は「どのKWが反応するか」を見るための期間です。いきなり成果を求めるのではなく、データを取ることに集中してください)
除外KWを毎週積み上げるだけで無駄の半分は消える
少額予算では、1クリックの無駄が大きなダメージになります。月10万円で月間125クリック取れるとして、そのうち20クリックが意図しない検索語句経由だとしたら、月1.6万円が無駄に消えている計算です。年間で約19万円。少額予算の広告主にとって、この金額は無視できません。
これを防ぐのが除外KWの運用です。Google広告の管理画面で「検索語句」のレポートを開くと、実際にどんなキーワードで検索した人に広告が表示されたかが分かります。ここに意図しない検索語句が含まれていたら、除外KWとして登録する。これを週1回のルーティンにします。
最初の1〜2ヶ月は特に多くの不要な検索語句が混ざります。業種によっては「求人」「年収」「資格」などの情報収集系クエリが目立つことが多い。こうしたクエリは最初にまとめて除外リストに入れておくと効率的です。
除外KWは蓄積型の資産です。1ヶ月で10個、2ヶ月で25個、半年で50個と積み上がっていくことで、アカウントの精度は着実に上がっていきます。同じ月10万円でも、除外KWが0個のアカウントと50個のアカウントでは、有効なクリックの数がまるで違います。
デバイス別・時間帯別の入札調整で予算の効率をさらに上げる
BtoCはスマホ、BtoBはPCに寄せる
Google広告ではデバイス別に入札の強弱をつけることができます。少額予算ではこの調整が地味に効きます。
BtoCのサービス(飲食店、美容室、整体院など)は、ユーザーの大半がスマートフォンから検索します。PC経由のクリックを抑えてスマホに予算を集中させることで、コンバージョン率の高いデバイスに優先的に配信できます。Google広告の管理画面で「デバイス」タブを開くと、デバイス別のクリック数やコンバージョン数が確認できるので、まずは2〜4週間データを取ってから入札調整を入れるのが堅実です。
逆にBtoBのサービス(コンサルティング、システム開発、法人向けサービスなど)は、業務時間中にPCから検索されることが多い。スマホ経由のクリックは比較的コンバージョン率が低い傾向にあるので、スマホの入札を-30%〜-50%程度に下げてPCに予算を寄せる方が効率的です。
配信時間帯の調整も検討する
業種によっては配信時間帯の調整も有効です。BtoBなら平日9時〜18時に集中させる。深夜や休日のクリックはコンバージョンにつながりにくいので、その分の予算を営業時間帯に回します。月10万円の予算を24時間均等に配信するより、成果が出やすい時間帯に厚く配信する方が合理的です。
(ただし、最初から時間帯を絞りすぎるとデータが偏ります。初月はフル配信でデータを取り、2ヶ月目から時間帯調整を入れるのが現実的な進め方です)
広告代理店に頼むか自社運用するかは「予算30万円」が判断ライン
月30万円未満なら自社運用も現実的な選択肢
広告代理店に運用を依頼すると、一般的に広告費の20%が手数料としてかかります。月10万円の広告費なら手数料は2万円。月30万円なら手数料は6万円。この手数料が「払う価値に見合っているか」が判断基準です。
率直に言えば、月10〜20万円の予算で代理店に依頼しても、代理店側の利益が少なすぎて手厚い運用は期待しにくい。担当者が複数のアカウントを掛け持ちし、月に1〜2回レポートを送るだけ、という状態になりがちです。(月2万円の手数料で毎週の除外KW更新を丁寧にやってくれる代理店は、正直あまりありません)
月30万円を超えてくると代理店側にもまとまった手数料が入るので、運用の質が上がりやすくなります。それ以下の予算なら、自社で運用するか、少額予算の運用に特化したパートナーを探す方が現実的です。
自社運用で最低限やるべきこと
自社運用する場合、必要な作業は大きく3つ。週1回の検索クエリレポート確認と除外KW更新、月1回の広告文の見直し、月1回の予算配分の見直し。週に30分〜1時間の工数で回せます。Google広告の管理画面操作は初心者でも1〜2週間で慣れます。高度なスキルは不要で、「検索クエリを見て、不要なものを除外する」という判断力があれば十分です。
いきなりP-MAXで始めるのは最も避けるべき失敗パターン
P-MAXは少額予算では機能しない
Google広告の営業担当やヘルプ記事では、P-MAXキャンペーンの利用が推奨されることがあります。しかし少額予算でP-MAXから始めるのは避けてください。
P-MAXは検索、ディスプレイ、YouTube、Gmail、Discoverなどあらゆる面に自動配信するキャンペーンです。AIが最適な配信先を選ぶとされていますが、最適化には十分なコンバージョンデータが必要です。月10万円の予算ではコンバージョン数が少なすぎて、学習が進まないまま予算が消化されていきます。
さらに大きな問題として、P-MAXではどの検索語句にいくら使われたか、どのサイトにバナーが表示されたかの詳細が見えにくい。少額予算の運用では「1円単位で何にお金が使われているか」を把握することが重要なのに、P-MAXはその透明性を大幅に制限します。
(Googleが「AIに任せましょう」と言うとき、それは広告主にとって最適という意味ではなく、Googleにとって都合がいいという意味であることが多いです)
マッチタイプをデフォルトのまま放置するのも典型的な失敗
P-MAXと並んで多い失敗が、マッチタイプをデフォルトの部分一致のまま放置するパターンです。Google広告でKWを登録すると、初期設定は部分一致になっています。これを完全一致に変更せずに放置すると、意図しない検索語句に予算が流れ続けます。少額予算では部分一致を使う理由がありません。KW登録時に必ず完全一致に変更してください。
広告は「出して終わり」ではなく「出してからが本番」
リスティング広告の初月は「データ収集期間」と割り切るべきです。最初の1ヶ月で分かることは「どのKWがクリックされるか」「どんな検索語句が混ざるか」「クリック単価の相場はいくらか」といったデータです。このデータをもとに、2ヶ月目以降にKWの取捨選択、除外KWの追加、広告文の改善を行います。
初月から問い合わせが取れることもありますが、それは結果論です。初月は「投資」ではなく「調査費」と捉えてください。月10万円の調査費で、自社のサービスに対する検索需要の実態が分かる。これだけでも十分に価値のある支出です。
2ヶ月目以降は、初月のデータを使って改善を回します。反応の良いKWに予算を集中させ、反応の悪いKWは停止する。除外KWを追加して無駄なクリックを減らす。広告文のクリック率を比較して効果の高い方を残す。この改善サイクルを毎月回すことで、3ヶ月目あたりから費用対効果が安定してきます。
(初月で「成果が出ない」と判断して広告をやめてしまう会社が本当に多い。3ヶ月は継続する前提で予算を確保してください)
最後に
リスティング広告は月10万円から始められます。ただし、少額予算で成果を出すには「絞る設計」が必須です。完全一致でKWを限定し、検索連動型に集中し、除外KWを毎週積み上げる。派手な施策は一つもありませんが、この地道な運用の積み重ねが少額予算での成果を生みます。
広告代理店の多くは、少額予算のアカウントに十分な工数をかけられません。だからこそ自社で運用する力をつけるか、少額予算に真剣に向き合ってくれるパートナーを選ぶことが重要です。
サイシアでは、クライアント名義のアカウントで運用し、配信データをすべて開示する透明性の高い広告運用を行っています。「まず月10万円で試してみたい」というご相談も歓迎します。